神官けんきゅうじょ まえがき

 

クリフトがザキ系を覚えた後半戦だと、海鳴りのほこらや滝の流れる洞窟などで、補助呪文の使用率が低下する。それをなんとか解決できないものか・・・。なんか、方法はないのか。

クリフトは導かれし者たちのAIの中でも、一番行動が読めない。打撃や攻撃呪文専門なら、「みんながんばれ」でがんばることはだいたい決まっている。基本的には、攻撃していればいいのだ。しかし、クリフトはがんばる選択肢の状況判断がかなり難しい。回復役でもある彼がザキを使えば使うほどMPが無駄になり、回復ができなくなるリスクが大きいのだ。しかし、ザキが一発で決まれば、その威力は絶大だ。マニュアル戦闘だって、場合によっては生身の人間が選択に悩むような呪文(マヌーサ、マホトーン)も覚えている。かっこよく行動させるのは、ほんとうに至難の業。けど学習AIがせっかくついている唯一のDQ。なんとかしたい。

当時の開発元のチュンソフトは、どういう思考ルーティン(いわゆるアルゴリズム)をクリフトに植え込んだのか、知りたい・・・かっこよく行動させる方法なんてないよ・・・とか言われるのかも知れないし、言われないかもしれない。これが、DQ4以降に採用されたオートバトルAIなら、とっくにあきらめている。でも、学習するAIには時々、知性が垣間みえる・・・。めいれいしなくたって、まんげつ草や薬草をちゃんと使ってくれる。何度も戦っている敵グループになかなか使わなかったマヌーサを思い出したように、突然唱える・・・。うぉ!クリフト、やるじゃない!となる。だから、あきらめきれないのだ。それに、発売前、チュンソフトはテストプレイしているはず。ストレスが溜まらないように作られているはずなのだ。ただ、凡人である一般ゲーマーのいいかげんな装備やめいれいでプレイするのと、プログラマの設定した思考回路には差がある可能性が十分にある・・・と推測している。(なんといっても、AIの入ったRPGは前例がないのだから。) だから、条件さえそろえば、あまり使わないと思っていた呪文や行動をとる可能性がないわけではない。その条件さえわかればなぁ・・・。

そういえば、DQ4開発前、学習する○○というのが流行っていたのを最近思い出した。ワードプロセッサー(いわゆるワープロ)の学習変換機能もそのひとつだ。使う人に合わせて、使用頻度が高い単語は優先順位をあげて記憶する。また、一括変換という機能で、長いひらがなを打っても句読点をみつけて変換し、変換に失敗してもひたすら学習し、しまいには思い通りの変換が一発でできるようになる。その賢さに驚いていたような時代だ。今では当たり前なんだけど。DQ4ってその時代に登場したような気がする。プレイヤーが育てるAI。でも、ワープロとゲームは違ったし、容量や開発期間との戦いがあったに違いない。

DQ4の印象はDQ3をプレイした後だったけど、素直に面白かった。それは、ストーリーとキャラクターの良さだけではない。なんといってもAIが自力で考えてくれる不思議な感覚で、これにびっくりした。NPCだけどホイミンのホイミもさることながら、導かれし者たちの学習は面白かった。複数登場する敵を攻撃するとき、学習によって優先順位を効率よく考えてくれるようになる。ザキを唱えるクリフトだって好きだった。唱えさせたくなければ、装備を固めて、めいれいを適切にすれば、ラスボス以外それほど困った記憶がない。でも、DQ3を愛する多くのゲーマーには、AIにいらだつ人(めいれいさせられない不満)も多かったようだ。わたしの場合、DQ3をやった直後にDQ4をやったので、システムを素直に受け入れてしまって、違和感を感じなかったのかもしれない。さすがに「いろいろやろうぜ」は使わなかったけど。

 結局発売後、AIでも結構、賛否両論だったDQ4。当然、チュンソフトだって、そのままということにはならないだろうと思った。案の定、チームはバラバラになった。DQ5が出てる頃、セガのシャイニング&ザ・ダクネス(DQ3とDQ4のチーフプログラマとアシスタントプロデューサが作ったゲーム)が出ていた。これをプレイするとわかるけど、このゲームの戦闘の時だけは、まさにドラクエそのものをプレイしている感覚だった。プログラマがいかにゲームのセンスを決めるかを思い知ったのはこの時。そして、DQ4以降、学習するAIは消えた。皮肉にもデスピサロが進化に失敗し、消滅したように。本当に残念。学習するAIは、進化するべきだったと今でも思っている。

ちなみに、IVはチーフプログラマーが2人いるんだけど、AIを作ったのは山名学氏。で、もう1人はDQ3でもチーフプログラマーだった内藤寛氏。で、それをまとめていたのが、ディレクターの中村光一氏。ほんとにチュンソフト解散して欲しくなかった。

現在のオートバトルAIは、そういう経緯があったとはいえ、いいんだけど、なんかなぁ。それはまるで、パーティーキャラの行動優先順位決定が、ボスのローテーション攻撃のようで、やりこめば、やりこむほど、ワンパターンと感じるからだ。たとえば、携帯版DQ3だと、雑魚戦で各々の敵に対して、「わたしにまかせて」で賢者が唱える呪文の順番は決まっていて、その順番がホイミ系以外、変わることはない。同じく携帯版DQ3で2人旅だと、オートバトルのAIは「いのちだいじに」で絶対にスクルトを唱えず、必ず2ターンかけて先頭からスカラを唱える。でも、敵の攻撃はセカンドポジションにも来る可能性が大きいはず。一方、FC版DQ4のクリフトは、2人旅でも、1ターン目で必要ならスクルトを唱えてくれる。消費MPと受けるダメージの確率、ターン消費を総合して考えても、2人にかけるなら当然スクルトだ。そして、臨機応変にスカラやマヌーサを唱えることもあるから、やはり学習型AIに、オートバトルAIにはない知性を感じるのだ(この知性が良い悪いかは別として)。むしろ、今のシステムが「めいれいさせろ」に、おまけでオートバトルAIを付けている感じなのだから、比較してはいけないのかもしれない。

そもそも、RPGにAIを期待するべきではなく、やはりゲーム全体としてAIに頼ることはやめ、ストーリーやキャラクターにウェイトを置くことにしたんだろうね。当たり前のことで、RPGってAIを楽しむものではない。それはわかる。でも、本末転倒なのかもしれないけど、わたしは、やっぱり学習AIそのものが面白い。だから、FC版DQ4が好きなのだ。それに、FC版は余計なキャラクター付けもないし、そのAIの行動は、ほんとに一緒に冒険しているみたいで、楽しくクリアできる。

そして、欲張りなわたしは、内心クリフトにもっと補助呪文を使って欲しいと思ってしまった。マヌーサ、マホトーンは特に好きな補助呪文。やりこめばやりこむほど、もっと唱えて!とつい懸命になる。でも当時は、AI学習に専念しているとレベルが上がってしまい、たとえ補助呪文を学習できたとしても、その頃には、「強くなると必要なくなる」→「唱えなくなる」となり、学習効果が思うように体感できなかった。

でも、今は改造ができる。(時間もできたしね)。クリフトの行動や学習がどうなっているのか、ひょっとするとヒントが少しはつかめるかもしれない。そうすれば、フィールドやダンジョンごとの、戦闘も全部楽しめるかもしれない。もちろん、できない確率が高いのはわかっているけど。調べているサイトもないしみたいだし、じゃあ、自分でやるしかないか・・・と。

難航するだろうけど、ここはひとつ、クリフトの気持ちをわかるためにもがんばってみよう。←モチベーションをあげるため(笑)。

 

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